第4回口頭弁論

10:30 入廷行動 弁護士会1階集合
11:00− ソロクト訴訟 第4回弁論 東京地裁
15:00− 楽生院訴訟 第1回弁論 東京地裁
16:00 記者会見
18:00 報告集会 弁護士会館1003号室
ソロクト訴訟第四回口頭弁論期日

熱気溢れる入廷行動
 4月13日午前10時30分,花冷えの霧雨降る中,弁護士会館1階に,ぞくぞくと人々が集まってきました。韓国からは原告姜禹錫氏を初めとして弁護団や支援者の方々が,台湾からは午後に行われる楽生院原告の黄金涼さんや弁護団の人々が,日本からも療養所退所者など多くの支援者が集い,これから始まる弁論への熱い思いを募らせていました。
 10時40分過ぎ,車椅子に乗った姜禹錫さんを先頭として,国籍入り混じった多くの人々が長い列となって,ゆっくりと東京地裁に向けて歩き出しました。裁判所の前で待ち受ける多くのカメラが,ソロクト訴訟への世間の関心も次第に高まってきていることを感じさせます。

結審期日決まる
 11時,東京地裁103号の大法廷の傍聴席には,満員の傍聴人の熱気が溢れていました。原告の準備書面4及び被告の準備書面3の提出が確認され,それを受けて国宗弁護士による意見陳述がなされました。ソロクトの療養所がハンセン病補償法の適用範囲外であると指定した国の主張がいかに不合理であり,また事実に反するものであるかについての丁寧かつ説得力ある指摘に,傍聴席の人々はかみしめるように頷いていました。
 続いて,次回に原告2人の本人尋問がなされることが決定されました。同時に,申請していたソロクト問題の研究者滝尾氏と参議院議員の江田五月氏の証人申請についての採用はしないとの裁判所の判断が示されました。この2人の証言は,歴史的な事実を明らかにするという観点から非常に意義があると思われたことであっただけに,その採用がなされなかったのは大変残念なことではあります。
 しかしながら,それでは返す刀で,と徳田弁護士が立ち上がり,証人を採用しないのであれば早期結審をとの要求をしました。裁判所もこれに理解を示し,5月23日の原告本人尋問期日に続いて7月19日に原告の最終準備書面提出と結審のための期日を指定しました。裁判所は弁護団が求めた判決期日の指定までは受け入れませんでしたが,7月中の結審が決まったことで,9月中に判決がなされる道が開けてきました。
次回原告本人尋問期日は5月23日11時から昼休みをはさんで夕方まで,その次の結審のための弁論期日は7月19日午前11時からです。両期日とも是非足を運び,宜しくご支援くださるようお願いいたします。

10万人の想いをこめて署名提出
 午後になって,原告姜禹錫さんを先頭として多くの人々が集まり,裁判所に署名提出を行いました。今回届けられたのは,日本で集められた6万以上の署名に韓国から届けられた4万以上の署名を加えた,約10万もの署名です。支援者の人々が「早期解決を」「みんなの気持ちが詰まってるから」とそれぞれの想いを伝えながら受付カウンターに署名の束を積み上げていき,その高さは受け付けた書記官の胸にまで達していました。最後に姜さんが車いすから「公正な裁判をお願いします」と伝えると,書記官は神妙な顔で「裁判官に伝えておきます」と応えていました。
 今回の集計で,署名は総計して13万3千あまりが集まったこととなります。皆さまの熱意とご協力に感謝します。しかしながら私たちの目標はさらに多数の,50万もの署名を集め,早期解決への気運を高めることです。更なるご支援を宜しくお願いいたします。

楽生院裁判第一回口頭弁論期日

国際色豊かな入廷行動
 午後2時30分,再び弁護士会館1階ロビーに大勢の人が集まりました。3時より始まる楽生院裁判の第一回弁論のためです。今回が生涯初めての渡航となる原告黄金涼さんを初めとして,台湾からは弁護士や人権促進協会のメンバーがこの裁判のために大勢来日してくれました。午前のソロクト裁判の弁論期日を終えた韓国の皆さん達も国際連帯のために応援に来てくれています。日本の支援者たちも一緒となりわいわいと入廷行動をしました。

原告意見陳述〜私の夢を返してください〜
 午後3時。法廷が開廷しました。多くの支援者のお陰で午前中に引き続き傍聴席はほぼ満席となりました。まず訴状と答弁書の陳述が確認され,原告側の意見陳述となりました。大槻弁護士に付き添われ黄金涼さんが証言席に進み出ます。日本占領下の小学校で覚えたというたどたどしい日本語を使いながら,金涼さんは日本政府の行った強制隔離政策によって自らの受けた被害を語っていきます。ともに発病し弟や妹と家に隠れていたが,結局お召し列車に乗せられ楽生院に行かなくてはならなくなってしまったこと。患者は楽生院で毒殺されてしまうという噂を信じて,死ぬ覚悟で列車に乗ったこと。その後の数十年にわたる隔離によって,自慢だった家も,楽しみにしていた修学旅行も,大好きだった家族も,そして学校の先生になるという将来の夢も全て失ってしまったことを訴えました。「私の夢を返してください」金涼さんの涙ながらの悲痛な叫びを裁判官は真剣に聞き入っていました。金涼さんは,この裁判のほんの少し前になってはじめて「自分でも人らしく生きたいと口に出していいのだ」ということを知ったと述べていました。自分に人としての権利があると信じることをも奪ってしまう強制隔離政策の残酷さを改めて突きつけられ,弁護団は,何としてもこの裁判を勝たなくてはならないとの思いを強くしました。

弁護団意見陳述〜公平の理念の実現を〜

 続いて原告代理人の久保井弁護士及び徳田弁護士による意見陳述が行われました。久保井弁護士は台湾における日本占領時のハンセン病政策と楽生院の状況,そしてそこに収容された原告達の悲惨な状況を訴えました。続いて徳田弁護士がこの裁判の法的な観点からの意見陳述を行いました。この裁判の争点は,ハンセン病補償法において補償の対象となっている「国立らい療養所」に含まれるか否かという1点に尽きること,そして補償対象を国籍や住居地によって差別しないハンセン病補償法の平等・公平の理念からすれば,日本統治下にあり旧らい予防法が勅令によって適用されていた台湾の楽生院も当然に「国立らい療養所」に含まれることを主張しました。さらに楽生院の原告たちは高齢であり一刻も早期の解決をすべきであるから,訴訟の進行も迅速に行うべきであるという意見も述べられました。

早期結審を目指して
 これを受けて裁判所は,原告・被告側の現段階での主張・争点を整理する発言及び釈明をしました。これを聞く限りでは,裁判所は争点を正しく理解してくれているようだとの感触を弁護団は持ちました。また訴訟の進行についても,裁判所は原告側が求めた次回期日ビデオ上映を認める方向での期日指定を認めました。このままいけば,次回6月15日午後3時からの期日では原告側から被告の答弁書に対する反論を含めた本件訴訟の論点に対する網羅的な準備書面を提出するとともに,楽生院の状況などをまとめたビデオ上映が行われることになります。次回も是非多くの人に傍聴席に足を運んで頂きご支援賜りたいと思います。どうぞ宜しくお願いします。

記者会見〜楽生院移転問題にも注目を〜
 弁論が終わった後には,東京地裁の司法記者クラブで記者会見が行われました。まず国宗弁護士が今回の弁論期日の報告をし,続いて韓国における弁護団長パク弁護士がソロクト裁判の意義と継続的な支援の必要性が訴えられました。続いて台湾楽生院の弁護団李先生及び原告金涼さんより,現在楽生院が台湾政府により強行的に移転させられようとしている問題についてアピールされました。住み慣れた療養所を取り壊し,入寮者たちを行動の自由も楽しみもない病院のようなビルへと閉じこめようとする台湾政府の行為は,二重の意味での強制隔離を強いることに他なりません。台湾ではこの問題について既に差し止め訴訟が提起されていますが,今後ももこの問題について日本の私たちも含めた連帯的な行動を起こしていく必要があります。

報告集会

「出会いは人生を動かす」
 夕方18時からは,弁護士会館において,裁判に参加された二人の原告や韓国・台湾の弁護団などをお招きして報告集会が行われました。各地から応援にかけつけてくれた支援者など70人もの人たちに集まって頂きました。国宗弁護士による今日の期日における成果と今後の見通しが語られた後,韓国の弁護団・台湾の弁護団から挨拶とメンバーの紹介がなされました。続いて原告の2人に対して簡単なインタビューに答えて頂きました。ソロクト原告の姜禹錫さんは支援に対してお礼を述べていらっさいました。今日意見陳述をされた黄金涼さんは,意見陳述の時,昔のことを思い出して悲しい気持ちになったとおっしゃっていました。原告にとって強制隔離の事実は語ることさえ難しい過酷な記憶なのだということが分かります。しかしながら,金涼さんは,「日本に来るのは勇気がいりませんでしたか?」という質問に対して「久保井先生や大槻先生に頼まれて,断るわけにもいかなかった」と答えて会場を笑わせるなどチャーミングで気丈な面も見せていらっしゃいました。
 続いて会場の支援者たちから激励の言葉が寄せられました。熊本訴訟の原告である上野正子さんからは「感動は人の心を動かし,出会いは人の人生を動かす」との言葉が紹介され,人々のつながりによる連帯の必要性がアピールされました。
 また会場の参加者から多摩全の医療過誤の問題についても注目していく必要があること,研究者滝尾さんからミクロネシアにも無視されている療養所の問題があることの指摘がなされました。

自国民中心主義からの脱却を

 最後に徳田弁護士が今回の訴訟を通して考えていく必要があることとして次の3点を述べられました。まず第1にこの裁判を通じて歴史的事実を明らかにしなくてはならないということ。第2にこの裁判を通して,私たちの国や,私たちの中にある,自国民中心主義を問い直さなくてはならないということ。第3にこの訴訟を韓国・台湾・日本のハンセン病に対する偏見・差別を一掃する第1歩としなくてはならない,ということです。この訴訟は私たちに人権とは何なのかという問いを私たちに突きつけています。私たちは熱意と信念をもってこの問いに取り組んでいかなくてはならないのです。

 報告集会の後,今日の健闘をお互いにたたえ慰労する懇親会が開かれ,長かった1日が終わったのでした。

(M.T)