総理大臣小泉純一郎殿
厚生労働大臣尾辻秀久殿


        台湾楽生院訴訟判決に対する控訴断念と
韓国ソロクトを厚労省告示に追加することを要請します。

   2005年10月25日、東京地裁103号法廷で民事38部(菅野博之裁判長)は、台湾楽生院のハンセン病補償金不支給処分取消訴訟に対して、原 告勝訴の判決を下しました。これは日本統治時代に、台湾の楽生院に強制隔離された人々に対し、2001年5月11日の熊本地裁判決にもとづく「ハンセン 病補償法」の主旨に従い、日本国内にある国立、私立の療養所と同じく、国からの補償を認める判決です。この判決は、補償の支給対象を定める厚生労働省の 告示に上記療養所が入っていないという理由で補償請求を棄却した処分の取り消しを命じるもので、当然のものであると同時に実質的に日本の植民地支配に対 する責任を認めたという意味で、意義深いものと評価します。原告には80歳を  越える方も多くいます。そのため国は、本判決を尊重し、ハンセン病補償法の前文に掲げた「悔悟と反省の念」を現実化するためにも、控訴することなく早急に補償を実施するように求めます。
   一方、同日の東京地裁103号法廷で民事3部(鶴岡稔彦裁判長)は、補償の支給対象を定める厚生労働省の告示に韓国のソロクトにある更生園が入っ ていないという理由で補償請求を退けました。この判決の根拠とされたのは・「ハンセン病補償法」の立法過程の国会審議でソロクトが明確には意識されてい なかったことや・ソロクトの被害の実態調査が行われて来なかったことです。すなわち、厚生労働省の不作為なのです。
   この二つの判決を台湾楽生院、韓国ソロクト更生園のハンセン病入所者たちの立場から、ハンセン病補償法の精神に基づいて考えますと、厚生労働省は 台湾楽生院については控訴断念、韓国ソロクト更生園については告示への追加によって、被害者たちの人権を回復する事ができます。こころすべきは人間の救 いです、行政的体面ではありません。
私たち日本カトリック部落問題委員会は、人間の尊厳が踏みにじられることのない世界を目指して、部落差別をはじめとする、あらゆる差別や抑圧からの解放の取り組みをしています。私たちにとり、韓国や台湾など、かつての植民地のハンセン病回復者の人権の回復は重大な関心事であり、2005年10月25日 の台湾楽生院判決への控訴を国が断念するよう強く要請し、かつ韓国ソロクトを厚労省告示に明示することを要請するものです。韓国や台湾の被害者にハンセ ン病補償法を適用することは4年前の熊本地裁判決が「今日まで続くハンセン  病患者に対する差別・偏見の原点」と述べて明らかにした「ハンセン病政策によって生み出された差別・偏見」を私たちの社会から取り除いていく働きのひと つでもあるからです。


2005年10月27日 
                日本カトリック部落問題委員会
                委員長  谷 大二(カトリックさいたま教区司教)