会 長 声 明
(「ハンセン病補償金不支給処分取消訴訟」東京地裁判決を受けて)

 

平成17年10月28日
全国青年司法書士協議会
会長 小 澤 吉 徳

 

 2005年(平成17年)10月25日、ハンセン病補償金不支給処分取消訴訟につき、東京地方裁判所民事第38部は、台湾楽生院入所者について不支給処分の取消を命じる、原告ら完全勝訴の判決を言い渡し、同地裁民事第3部は、同様の立場にある韓国の小鹿島更生園入所者の請求を棄却した。

 

 ハンセン病補償法は、国の強制隔離政策がハンセン病の患者であった人々に対する回復しがたい重大な人権侵害を犯したこと、強制隔離政策が誤ちであったことなどを認めた2001年(平成14年)5月11日の熊本地裁判決を受け、強制隔離政策によってハンセン病の患者であった人々に対して、耐え難い苦痛と苦難を継続せしめた「悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受け止め」、「いやし難い心身の傷跡の回復と今後の生活の平穏に資することを希求し」、「ハンセン病療養所入所者等がこれまでに被った精神的苦痛を慰謝するとともに、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復及び福祉の増進を図」ることなどを目的として制定された。

このハンセン病補償法の前文に謳われた立法趣旨に鑑みれば、同じ日本の絶対隔離政策によって療養所への入所を強制された韓国や台湾のハンセン病患者であった人々を補償の対象から除外することを正当化する民事第3部の判決は、ハンセン病補償法の立法趣旨を無視した極めて不当な判決と言わざるを得ない。

厚生労働省は、原告らの平均年齢は81歳を超え一刻も早い解決が望まれる今こそ、ハンセン病隔離政策に対する真の謝罪をすべきであり、当会は以下のとおり声明する。

 

声明の趣旨

 

1.厚生労働省は、韓国小鹿島更生園と台湾楽生院の入所者がハンセン病補償法の適用を受けられるように、平成13年6月22日号外厚生労働省告示第224号(以下、「告示」という)を速やかに改正すること。

2.厚生労働省は、不支給処分の取消しを命じた東京地方裁判所民事第38部の判決に対する控訴を断念すること。

 

声明の理由

 

台湾楽生院の原告に対するハンセン病補償法に基づく補償請求に対する不支給決定を違法として、その不支給決定を取り消した東京地方裁判所民事38部は、その判決理由中で、ハンセン病補償法を「単なる損害賠償ないし損失補償にとどまらず、政策的考慮に基づいて行われる特別な補償であると解するのが相当」とした上で、さらに「当時日本の施政権が及んでいた地域内の施設であって、他の要件は満たしているにもかかわらず、それが台湾に所在していた施設であるというだけの理由で、そこへの入所者を補償の対象から除外することは、平等取扱いの原則上好ましくない」、「平等取扱いの原則を無視して、ハンセン病補償法2条にいう「国立ハンセン病療養所等」の意義を台湾に所在した施設を除くなどと限定的に解釈することは、合理的でない」とした。この民事38部の判決は、ハンセン病補償法の立法趣旨を踏まえたものであり、高く評価するものである。

かたや、原告らの請求を棄却した同地裁民事第3部の韓国小鹿島の判決では、「証拠によれば、補償事務を担当する厚生労働省においては、外地療養所の入所者はその対象に含めないものと理解していた」と、厚生労働省のハンセン病補償法に対する認識について認定している。

このようなハンセン病補償法の立法趣旨とおよそ相容れない、厚生労働省のハンセン病強制隔離政策の被害者に対する意識が「謝罪」とはほど遠いことを自白したに等しい事実を以て、補償法による対象に含まれないと判断した裁判所に対して、遺憾の意を表すとともに、このような厚生労働省の変わらぬ姿勢に対し、強い憤りを覚える。

厚生労働省は、ハンセン病補償法の立法趣旨を決して損なわぬよう、日本国内の被害者のみならず韓国小鹿島更生園及び台湾楽生院の被害者に対しても、台湾楽生院訴訟の控訴を断念し、告示を改正することで「謝罪」の意を表すべきである。

さらに、厚生労働省は、韓国小鹿島及び台湾楽生院を訪問し、事実調査を行い、日本の強制隔離政策によって今なお続く『人生被害』に対し、早急に救済措置を講ずるべきである。


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